Ippongi, Ishikawa

SF Branch Ishikawa presents
Ippongi Brewery

愛されて一世紀、福井の名酒「一本義」

はじめまして: JFCサンフランシスコ支店の(酒担当)石川です。2月12日(土)このたび福井県勝山市に所在する「一本義酒造」に訪問してきました。実は到着2日前まで今年最高の降雪量を記録する大雪が降っていたのですが当日は晴天、目の前には霊峰白山が堂々とそびえたちます。その白山の懐に抱かれた小さな盆地に一本義の酒蔵があり清らかな雪解け水、美しい広大な田、そして厳寒の冬と、この勝山市では酒造りに最適な環境が揃っているんです。またこちら日本国内で最も恐竜の化石が発掘されている場所だそうです。近所にある福井県立恐竜博物館は40体の恐竜骨格をはじめ千数百もの標本がある国内最大級の恐竜博物館だそうです。

西日本最大級のスキーリゾート「スキージャム勝山」もこの地にある。経ヶ岳からの展望は素晴らしい!

: 霊峰白山の雪解け水は幾年の時を重ね地下山脈でろ過され酒蔵の井戸で流れ伝う。清められた井戸水を仕込み水として使用する。

: 稲作がもたらす黄金の地、奥越前は「五百万石」の日本有数の生産地。「越前山田錦」を使用した酒づくりにも取り込んでいる。

: 日本酒は淡麗辛口で標榜する中、一本義は味わい深い食中酒ならでわの口中の切れ味を求めていく。この酒が一滴の魔法になる。

越前勝山藩と一本儀酒造

周辺を散歩すると向いに神社が目に付きました。そこには「勝山藩主小笠原」とあり早速 調べてみると江戸時代に越前国勝山周辺を支配した藩主だそうです。副社長の久保氏に詳しくお伺いすると一本義の創業は1902年で藩政時代この地を収めた勝山小笠原藩の御用酒として名付けられた銘を創業後まもなく受継いだそうです。驚きです!以来百余年に亘り雪国に生きる人々の食生活の中で育まれ、昭和の初め頃より福井県内の酒造家としては製造・販売ともにトップ・ブランドとして今日に至るそうです。一本義酒造は由緒ある酒蔵なのです。

奥越前の自然、気候、人が譲した: 一本儀の代表的ブランド酒『伝心』その由来は「人が面と向かい話し合うだけでは心を通い合わせることが出来ないとき酒が一滴の魔法となって心を伝え和を結ぶことが出来る。」我々日本人が遥か昔から大切に育んできたそんな知恵をもとにこの酒が魔法の一滴になることを願い新たに立ち上げたブランドに『伝心』と名付けたそうです。人見知りの私にはぴったりですね!

一本義の精神とは
  

酒蔵の会議室の壁に掛けられた一本義の方向性:感銘しましたので撮影しました!!
『経営理念』日本酒製造業を中心にすえ関連する事業通じて常に変革と創造を重ね存在感ある企業を目指す。
『経営方針』1: 知恵と技術で高品質を実現する。2: お客様第一の心で商品に取り込む。3: より高いレベルに挑戦し経営の革新を。4: 人を大切にする明るい職場を築く。5: 企業の繁栄と優れた環境作りから社会との調和を努める。

「伝心・凛」大吟醸の仕込み作業
Denshin Rin

上記は南部杜氏の藤原悟氏をリーダーに7人の蔵人と一緒に「伝心」シリーズの【凛】純米大吟醸酒の仕込み作業:年間僅か1,000俵しか育てられない「越の雫」という希少な米で造られたお酒で白桃やライチを創造させる香りとみずみずしい口当たりが特長。写真1は米の蒸米作業:45%までに精米した米「越の雫」を蒸米機で水蒸気にて米を蒸している米蒸し作業は「蒸し」によって米のデンプンを麹が繁殖しやすい状態にもっていく最も大切な工程。写真2では蒸された酒米を酒母室で蒸米放冷をしている作業。蒸し米を短時間で適温17度位まで均一に温度を下げなければならない。そのためには素早い「切り返し」を幾度も繰り返し米だまを手でほぐしていく。温度センサー測定器は必要不可欠である。写真3は蒸米放冷した蒸米を事前に仕込んでおいた水麹に投入したタンク。清酒は3段仕込みによって本仕込みされるが、これが「初添」と呼ばれる作業。酵母の活発を妨げないようタンクの周りにはブルーの保温マットを巻きつけ温度管理をする。初添での適切温度は10.5度である。「初添」の翌日は“踊り”1日仕込みを休み3日目に「仲添」そして最後に「留添」と3回に分けて仕込んでいく。一本義では大吟醸(凛)の工程は全て手作業で行う。上記の作業で使用する米は675キロで一升瓶約2000本の大吟醸が生産される。

「古酒」 長期熟成酒へのこだわり


一本義の副社長である久保氏と小林製造部長に誘われて勝山市から車で走ること約30分:足羽市にある笏谷石採掘所跡地に到着した。洞窟に入って150メートル程のポイントに一本義の長期熟成酒貯蔵庫があります。なんとびっくりしたことに「洞窟の上方には野生のコウモリが…」そして「フラッシュライトを当てすぎると攻撃してきますから注意を」と何故か余裕の久保氏。この適度な湿気に低温度を維持できる笏谷石採掘所跡地の洞窟内は古酒の熟成貯蔵は最適だと久保氏は語る。古酒の存在は明治時代に「造石税」でお酒を造った段階で即時に課税される酒税制度や製造量と原料米の規制、さらには酒を熟成させる技術が発達していなかったため古酒の製造は忽然と姿を消したとの事です。しかし昭和29年「蔵出し税」に改定され高度経済成長と共に酒造りに関する規制が緩和されるようになってから日本各地の蔵で古酒の生産が復活したそうです。一本義でも「日本オールド」の復活への挑戦が始まった!最長は平成4年に醸造された「伝心・特別純米酒」アルコール度7~8%という古酒にしては珍しい低アルコールでありながら甘みと酸味を十分に備え、シェリー酒にも似たさばけの良さを持った何とも不思議な味がする古酒です。

酒造好適米の王様 山田錦


「良い酒造りは良い米作りから、良い米作りは良い土壌作りから」勝山市で酒造りに携わる人々の理念です。山田錦は兵庫県において大正末期頃に開発された頻出。大粒ながら心白が比較的に小さく、それゆえ高精白に有利になるそうです。大吟醸はお米の外側をたくさん磨き中心部だけを使うからだそうです。勝山市では平成9年から「奥越前・山田錦」の栽培をスタートしました。一本義、自信を持っての名酒「ファーストクラス」はANA国際線のファーストクラスで採用された特別商品:霊峰白山の懐に抱かれた奥越前にて契約栽培農家と共に丹念こめて育てた酒米の王様「奥越前・山田錦」を原材米に使用しました。中心部分を30%になるまで精米し最上の手間隙をかけて醸じた純米大吟醸酒です。口の中に広がる充実したふくらみはまるで水まんじゅうのようにプルプルと充実した旨さを持ちます。


一本義:編集・発行の雑誌【以心伝心】冬号2009年12月発行の見出しからひとつご紹介:「酒好きにとってうまい膳とは華燭ではない。気に入りの酒と肴が一品あればいい。できれば酒の故郷である地の肴があればこの上ない幸福な気持ちになるものだ。そんなうまい膳には以心伝心の気持ちが生まれる。」この度の訪問では、なんと!野熊の刺身をご馳走になりました。他では絶対に食べられるものではありません。伝心の酒と見事にマッチ!会話も弾みました。久保副社長そして杜氏と蔵人の皆様、ありがとうございます。